農薬を散布するのは非常に手間がかかるし疲れます。特に夏の暑い時期の作業は本当にしんどいです。ということでなるべく1回の散布作業で複数の防除をするために、数種類の農薬を混用するのが一般的です。
その中、農薬の製剤は、水和剤、水溶剤、フロアブル、液剤、顆粒水和剤、顆粒水溶剤、乳剤などがあり、いったいどういう順番で混ぜたら良いのかが分かりにくいという話を良く聞きます。そこで今回は混用の順番について説明します。
展着剤を入れて、その後は水に馴染みやすいものから混ぜるのが基本ルール
基本的には初めに展着剤を入れて、その後は水に馴染みやすいものから入れるのが基本ルールです。その際、薬剤を十分に水に溶かしてから次の薬剤を入れるようにしてください。
水に馴染みやすい順番としては下記を参考にしてください。
①水溶剤・液剤 ⇨ ②乳剤・フロアブル ⇨ ③水和剤
良く質問を受けるのですが、水溶剤と水和剤の違いは、”水に溶けるのが水溶剤” ”水に和(なご)むのが水和剤”と覚えてください。つまり水溶剤はその名の通り水に溶けている状態になのですが、水和剤は薬剤が水に分散されているだけの状態です。よって水和剤は放っておくとだんだん薬剤が底に沈んでしまいます。
これが基本ルールですが、薬剤によってはこのルールに沿わないものもあります。例えば展着剤だけど一番最後に入れるのを推奨していたり、最後に入れることを推奨する液剤もあります。特に初めて使用する農薬は注意書きを良く読んで、さらに専門家に聞くようにしたほうが良いでしょう。
なぜ混用に気をつけなければならないのか?
農薬の登録を取得するために必要な試験は全て単用で行います。これは混用してしまうとその薬剤単独の効果や残留性が分からなくなるためです。そこでメーカーは独自で混用事例を集めるのですが、農薬の数が非常に多いので、できたとしても2種混用の事例を集めるのが限界です。しかしながら農業現場では3種類4種類の混用が当たり前です。このような数種類の混用になると組み合わせが非常に多くなりリスクの予測ができません。ということで予期せぬトラブルが発生する可能性が高まってしまいます。
ちなみにトラブルというのは大きく分けると下記の3種類が想定されます
- 沈殿物や凝集で物性が悪化しノズルなどに詰まって散布することができない
- 有効成分が他の薬剤の影響で分解されて効果が低下する
- 作物への薬害を助長する
いずれも発生すると大変なので十分に気をつける必要があります。